林に入った瞬間、心がざわつく

林の中でボールを見つめ、次の一打を考えるゴルファー。焦らず冷静に立て直す姿。

ティーショットが右にスライスして林へ。誰しも経験のある場面です。
ボールを探しながら、心の中では「まだ木の間を抜けるかも」「次でグリーンを狙えるかも」と希望と焦りが交錯します。
しかし多くのアマチュアは、この“焦り”に負けてしまいます。**「少しでも前へ」「なんとかグリーンを」**という欲が、冷静な判断を曇らせるのです。


目次

木と木の間を狙う“賭け”のショット

狭い木の間を抜こうとする――それは一見勇気ある選択に見えますが、実際はギャンブルです。
枝に当たって「キン!」と音を立て、さらに林の奥へ転がることもしばしば。
自分では「リスクを取って攻めた」と思っても、結果は2打損する守りの欠如です。


ナショナルコーチの教え:「まずは確実にフェアウェイへ」

女子アマのナショナルチームのコーチは、林からの対応をこう指導しています。

「林に入ったら、まずは確実にフェアウェイに出して3打目に期待しなさい。無理してグリーンを狙うのはプロでも難しい。」

アマチュアが100を切るためには、リカバリーショットを決めることよりも、トラブルを悪化させないことのほうが大切。
冷静にフェアウェイへ戻す“勇気”が、結果としてスコアを救うのです。


中部銀次郎の教え:「ごめんなさい」と1打罰を払う

中部銀次郎さんは、林から確実に出すとき、心の中でこう唱えたといいます。

「ごめんなさい。」

そして“1打罰を払うつもりで出す”。
この「ごめんなさい」の一言が、心の安定剤になるのです。
ミスを受け入れ、潔く出す。その瞬間に焦りが消え、呼吸が整い、次のショットに冷静さが戻る。
中部さんのこの姿勢は、スコアをまとめる心理の極意とも言えます。


ただ出すだけではなく「次の場所を設計する」

多くの100切り未達ゴルファーは、「フェアウェイに出せばそれでいい」と考えがちです。
しかし本当に上手な人は、“出す”ショットにも意図を持っています。

林の中から打つ前に、いったんフェアウェイに出て周囲を確認します。
そして考えるのです。

「フェアウェイのどこに出せば、3打目がグリーンに乗りやすいか?」
「次に使いたいクラブで、無理なく届く距離はどこか?」

つまり、ただ脱出するのではなく、**3打目をデザインする“位置出しショット”**を打つ。
これができるようになった瞬間、100切りは一気に現実味を帯びます。


無理をすれば、心が乱れる

中部銀次郎さんはこうも言っています。

「無理をすると心の落ち着きがなくなり、焦って気が合わなくなる。」

無理に枝の間を狙って失敗すると、その後のプレー全体が乱れます。
一方で、確実に出して呼吸を整えた人は、3打目を冷静に構えられる。
スコアは結局、「心の安定」をどれだけ保てるかで決まるのです。


「後ろに出す」という勇気

“前に出す”ことばかり考えるのも危険です。
ボールが木の根元にある、スイングが取れない、無理をすればケガのリスク――そんな時は、あえて後ろに出す選択肢もあります。
勇気をもって1打を捨てることが、結果的にダメージを最小化します。
100%出せる方向を選ぶ――それは安全策ではなく、スコアを守るための戦略です。


「捨てる勇気」がスコアを拾う

林の中で“出すだけ”のショットを打つと、どこかで「もったいない」と感じるものです。
しかし中部銀次郎さんはこう言いました。

「捨てる勇気が、結果を拾う。」

パーは狙えなくても、ボギーで止められれば十分。
無理をせずに落ち着いた1打を選ぶことこそ、上達の第一歩。
派手なナイスショットよりも、地味なミスの防止がスコアメイクの本質なのです。


ラウンド中に冷静さを保つ3つの習慣

  1. ボールを探す前に深呼吸する
     林に向かう前に、まず一呼吸。焦りを落とすだけで判断が変わる。
  2. 成功確率70%以上のルートしか選ばない
     枝越え・木の間抜きはプロでも難しい。確実性を基準にする。
  3. 次のクラブを“打ちたいクラブ”で選ぶ
     3打目をどの番手で打ちたいかを考えて、出す方向を決める。

今回のラウンドを振り返って

今日のラウンドでは、2回スライスで林に入った。
1回目は無理して木の間を狙い、枝に当たってさらに奥へ。
2回目は、中部銀次郎の「ごめんなさい」を思い出して、9番アイアンでピンが狙える場所のフェアウェイへ出した。
すると、3打目が自然と落ち着き、ボギーでまとめられた。
「出す」ではなく、「立て直す」。この感覚を、これからのラウンドでも続けていきたい。


練習場でできる“リカバリー練習”

林からのショットを想定した練習は、練習場でも可能ですし、日ごろから練習しておかないと、現場ではなかなかできないです。また、練習でも実際に林に入ったところの想像しながらの練習が効果的です。

  • ローボール練習
     ボール位置を右寄り、スタンスを狭くして低い弾道を打つ。
     枝の下を抜く感覚を磨く。
  • 9番や7番アイアンでの“出すだけショット”
     方向性だけを意識してハーフスイング。距離よりもフェイスコントロールを重視。

まとめ:林は「反省の場所」であり「再起の場所」

林に入ったとき、焦るのではなく、立ち止まって考える。
中部銀次郎さんの言葉を思い出して「ごめんなさい」と心で唱え、確実に出す。
そしてフェアウェイに立って、次の一打をデザインする。
これができるようになったとき、ゴルフの質が一段上がります。

「林からの一打こそ、ゴルフの人間性が出る。」

そう中部さんが言うように、ミスを受け入れ、立て直す力が本当の上達です。


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