サンドウェッジ(SW)はなかった?
──9番アイアンでバンカーを攻略した名手たちの物語
現代のゴルフでは、バンカーショットといえば「SW(サンドウェッジ)」が常識です。
しかし、少し昔の時代にはそのクラブすら存在せず、9番アイアンでバンカーを攻略するのが当たり前だったことをご存じでしょうか?
今回は、サンドウェッジ誕生以前のゴルファーたちの工夫と、SWが生まれた“きっかけ”に迫ります。
ハリー・バートンは9番アイアンでバンカーを制した
名手ハリー・バートン(Harry Vardon)は、1900年代初頭のゴルフ界を席巻した伝説的プレイヤーです。
彼は当時、SWやPWといったウェッジ類が存在しない中で、9番アイアン1本でさまざまなショットを打ち分けていました。
特に注目すべきは、バンカーからのショット。
柔らかい手首の使い方、クラブフェースの開き、砂の抵抗を感じ取る繊細なタッチ――
そうした感覚的なプレーを、1本の9番アイアンでやってのけていたのです。
「クラブに頼らず、技術で勝負する」
そんな哲学が当たり前だった時代のゴルフには、今では忘れかけている“技術への信頼”が息づいていました。
サンドウェッジを発明したのはジーン・サラゼン
そして1930年代。ゴルフクラブに“革命”をもたらすひとりの天才が登場します。
それが、ジーン・サラゼン(Gene Sarazen)です。
彼は航空機の尾翼にヒントを得て、クラブヘッドの裏側に「バウンス角」を設計。
これが、現在のサンドウェッジ(SW)の原型となりました。
滑らかなソールが砂に刺さらず、バウンドしながら抜ける。
それまでの「砂に刺さらないように打つ技術」に加え、「クラブが刺さらないように作られる時代」が始まったのです。
技術と道具の融合によって、バンカーショットは大きく進化しました。
PWやAWの登場はもっと後だった
ちなみに、ピッチングウェッジ(PW)が一般に普及するのは1940~50年代、
さらにアプローチウェッジ(AW)は1980〜90年代と、かなり後になってからの登場です。
つまり、サラゼン以前のゴルファーたちは、ロフトやバウンスの違いなど選べる時代ではなく、
「1本のクラブで、すべてを創意工夫で打ち分けていた」のです。」
現代のゴルファーは“選べる贅沢”の中にいる
現在では、50度・52度・56度・58度など、多くのウェッジから自分に合うものを選べます。
クラブの選択肢が広がり、道具の力を最大限に活かせる時代です。
しかし本来、ゴルフとは「その場にある条件の中で工夫するスポーツ」。
クラブが進化しても、“打つのは自分”という本質は変わりません。
だからこそ、道具に頼るだけでなく、先人たちの工夫や感覚に学ぶことが、
ゴルフをより深く、面白くしてくれるのではないでしょうか。
まとめ:クラブの進化の裏にあった、挑戦の歴史
- ハリー・バートンは9Iでバンカーを攻略した
- ジーン・サラゼンは尾翼にヒントを得てSWを発明した
- 現代のゴルファーはその恩恵を受けている
あなたのウェッジショットにも、少しだけ“先人たちの工夫”を込めてみてはいかがでしょうか?
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